オトコラム

第36号 骨で聞く(1)

「骨伝導(こつでんどう)」という言葉を聞いた事があるでしょうか?
もうなくなってしまいましたが「ツーカー」という携帯電話会社が、一時期、「骨伝導式携帯電話」を発売して、一般の方にも知られるようになりました。

今号から数回に分けて、この「骨伝導」のメカニズムを解説して行きたいと思います。
「特殊な携帯電話の方式?」なんてタカをくくっていたら大間違い!

骨伝導は、私達が普段の生活の中で音を聞いているときにも、大いに役立っているのです。
皆さんも、普段から使っているのですよ!

これまでオト・コラムでお話してきたように、私達は、外耳から中耳、内耳を通して音を聞いています。

実は、私たちが音を聞く経路は、もう一つあるのです。
それが骨導(骨伝導)です!

専門的に分けると、これまで述べて来た、外耳~中耳~内耳の経路で音を聞く経路は

「気導(きどう)」
と呼ばれ、もう一つの経路は
「骨導(こつどう)」
と呼ばれます。

オト・コラムの読者なら既にご存知の通り、人間は空気の波である音を耳の穴を通して鼓膜で受けて、それを耳小骨が内耳の中のリンパ液を揺らす事によって音を聞いています。
(ご存じない方は、オト・コラムで「人が音を聞くメカニズム」のシリーズを、お読みください」)

このメカニズムを知れば、極論ではありますが、外耳と中耳が無くても、内耳の中のリンパ液が揺れれば、私たちは音を聞く事が出来るということに気付くでしょう。

骨導は、文字通り、骨を通して音を聞く経路です。
具体的に言うと、中耳を使わずに、頭蓋骨を揺らすことによって、頭蓋骨の中に収まっている内耳に、音を直接伝える経路なのです。

ツーカーの骨伝導式携帯電話が、少しだけ流行った事がありました。
携帯電話をこめかみなどの硬い骨に充てると音が聞こえる仕組み。

体験した方は、いらっしゃいますか?
ちょっと不思議な感じがしたでしょう?

耳の穴ではなく、こめかみに充てているのに、音がハッキリ聞こえるのですから。

(2011.10.11)


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