特別企画 対談

vol.5 「日本再生と聴覚心理」
     ~日本企業再生のヒントに知的財産の活用~

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****中小ベンチャーの知財活用**** 

坂本 前職の時(リオン)も特許を出願していましたが、正直、費用の心配までは・・・規模の大きな会社と小さな会社では、経営にかかる費用の負担が違います。ただし、持っていれば“武器”としての強さも違います。一言では表せないかもしれませんが、小さな会社が効率よく知財を役立てていくには、どうしたら良いかアドバイスをいただけますか。

鮫島 まずは、徹底的に特許明細書をブラッシュアップしなければいけないですね。つまり、大手のように100件出して1件当ればいいという話ではないんです。

坂本 はい、分かります。

鮫島 中小・ベンチャーは2件で1件ぐらいでないと駄目なわけです。それが不可能かというと、そういう目で特許明細書をブラッシュアップしていけば十分に可能性はあります。そのためには、我々のような専門家を使って行っていただいた方が良いです。我々のコンサルティング費用もかかりますが、結果として、それのほうが安くなると言えますね。トータル的に考えていただいた方がよろしいかと思います。

坂本 なるほど。

鮫島 もうひとつは、その会社のビジネスモデルや事業計画などに沿った特許ということをブラッシュアップしないといけない。一般の特許事務所ですと、その点は少し弱いですね。普段、契約書などを見ている我々の方がその点は強いと思います。

坂本 でも、中には弁理士費用も出さないで、特許を出願してしまう企業もありますね。以前、お付き合いのある会社で特許を見せて貰ったことがあるんです。端的にいうと何の権利も取れていなくて、自分達の技術を公知にしただけというのも、ありました。自分で明細書を書いたらしいです。

鮫島 それは良くないですね。

坂本 欧米では、また違いますか?

鮫島 やっぱり、日本は意識が低いのではないかと思います。アメリカの企業を見ると、知財や法務にかける予算のプライオリティは比較的高いですね。日本だと、まずは設備を買うとなりますが、アメリカはまずは特許出そうかって感覚ですね。

坂本 ひょっとしたら、弊社はアメリカ型かもしれませんね(笑)設備より、まずは特許一本出すみたいな感覚です。

鮫島 もちろんビジネスによってもですが、特許を出したほうが良いビジネスもある。なぜ、アメリカは意識が高いかというと権利意識が高いからですね。個性的なほど良い国じゃないですか。その個性の一つの象徴が特許ですね。

坂本 なるほど。

鮫島 あとは、風土ということだけではなく、VCも凄く良くチェックします。特許も出てないベンチャーに投資しないです。そのへんは徹底してチェックされますからね。日本もようやく、段々変わって、日本のVCの特許意識も大分上がってきました。

*VC:ベンチャーキャピタル

坂本 お話を聞いていて感じるのは、ベンチャーを起す人で、自分で特許を出せるほどのスキルを持った人は(日本では)少ないということですね。

鮫島 少ないですね。

坂本 そうなると外部の人に頼むしかないのに、日本人は外部の人に頼むことを嫌う傾向にあると思います。自分達にできないことは専門家に頼むという感覚はなくて、自前でやりたがりますね。結局、自分達ができないことは面倒くさい。だからやらない。だから特許も出さないというのにも繋がっているように感じます。

鮫島 そうかもしれません。

坂本 特許だけではなく、各分野の良いプロがいるわりには、日本企業は自前主義が強いように感じます。

鮫島 それは大企業のことを言われていますか?

坂本 う~ん、特に、そうですね。大企業は自前でやりたいって言いますね。

鮫島 大企業の自前主義は顕著です・・・

坂本 あと、大企業と古くからある中小企業もそうですかね。

鮫島 古くからある中小企業・・・苦手な会社は多いかもしれませんね。それは感じます。我々の分野でも、訴訟になると弁護士資格がないとできませんし、法務部がやるには限界がありますので委任されます。ただし、例えば、知財のマネージメントのコンサルティングに対するオファーとかは、大企業からは絶対に来ないですね。自分達で出来ていると思っているから。

坂本 なるほど。

鮫島 だけど、出来ているかどうかが問題というよりも、出来ていることをきちんと客観的に説明されることが本当は必要であると思っていて、オピニオンを出せる仕事はあると思っています。でも中々、その市場は開拓できていないです。

坂本 そうですか。私どもが苦労している部分に似ている気がします。

鮫島 同じだと思います。私達も弁護士業と一括りにしてしまえば昔からある業態です。 でも、やっている業態は極めて新しくて、中小ベンチャー企業の知財絡みを事務所の経営方針として支援をしているのは、未だに弊所だけだと思います。

坂本 ホームページなども見させていただくと、かなりチャレンジングなことをされていると感じます。

鮫島 チャレンジングと言うより、そこが必要だという信念がありますし、正しいことをしていると思っております。だんだん浸透してきて、マインドの良い企業がちょっとずつ来ているといった感じです。でも、まだまだ実マーケットの1%程度ですかね。

****日本製品の質が落ちた?**** 

坂本 最近、スマートフォン用のアプリを開発するのに、幾つかの機種を試したら日本製のスマートフォンの音が悪いです。

鮫島 そうですか?

坂本 韓国や台湾のメーカーの方がちゃんと作られていて日本製は、ほとんどダメですね。

鮫島 ええ!?(驚)

坂本 使用者は、ほとんど気付いていないみたいです。相手の声は、ちゃんとした音声が出ますが、こっちが喋った音声は、相手にひどい音で届いていたりします。

鮫島 本当に?

坂本 ある国内のメーカーに確認したんですが、聞く耳持ってくださらないですね。メーカーの技術者の方も、サウンドや聴覚の専門家でない人が答えているのかもしれません。私なんかがその悪い音を聞いいただけで、何をしているかのか大よそ推測はできます。

鮫島 どんなことですか?

坂本 設計の段階で、明らかに間違った部品を選定して、使用しているようです。

鮫島 なるほど。

坂本 門前払いというわけではありませんが、メーカーの方はこちらの話は詳しくは聞いてくださらないですよね。外部からの話には耳を傾けてくれないなと、実感させられました。

鮫島 本当に、大企業は保守的ですね。また、保守的で権威主義になってしまったのかな?小さな会社やベンチャーを取り合わないというか、排除してしまう傾向がありますね。

坂本 テレビのニュースなどでは、大手とベンチャーが手を組みましたって、特集で報道されることもありますが、実際には以前より少なくなってきている気がします。

鮫島 珍しいからニュースになるのではないですか?当たり前だとニュース性がなくなっちゃいますよ(笑)

坂本 そうですね(苦笑)

鮫島 そういう意味では、そういった(ベンチャーを排除する)大企業は駄目になって来ているのではないでしょうか?

坂本 キキトリックでご一緒した任天堂さんは、そんなことはなかったですね私どものような小さな会社とも一緒に開発をしていただきましたし、色々と意見なども聞いて頂いて、良いものを開発しようと取り入れて頂きました。大企業では逆に珍しいのですかね。

鮫島 日本には本当に色々な良い技術があるので、そこをきちんと統合する能力があれば、すばらしいものが出来ると思います。

坂本 本当にそう思います。

鮫島 そういうマインドがないですね。

坂本 そこに繋がりますね。この沈んだ感のある日本をもう一度浮上させるには、どうしたらいいのですか?明らかに韓国勢などに負けているイメージが強いですが。

鮫島 一部の業界ではそうですね。その業界は、話題性のある業界なので、日本総崩れみたいな論調ですが、決してそんなことはないと思います。素材とか部品は、あいかわらず強いですね。あんまり、日本全体という風に誇張するのはどうか?と思いますが、意外と日本が強いと思っていた業界は弱かったですね。

坂本 なるほど。そうかもしれませんね。

鮫島 いつのまにか保守的になってしまったんですかね?本来、日本が強いと言われていた業種は、革新的でなくてはいけなかったし、革新的だったから伸びてきたはずですね。今は、本当に保守的になってしまいましたね。


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