特別企画 対談

vol.6 「シニア(高齢者)と聴覚心理」

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**** ジェロトークアプリとは? ***** 

坂本 ここからは、ご一緒に開発させていただいた「ジェロトークアプリ」の話に移りたいと思います。ジェロトークアプリの基本的な機能は、自分の声を吹き込むと、その声がシニア(高齢者)や耳の悪い人に聞こえている声に変換されて聞こえる、シニア(高齢者)の聞こえを体験できるアプリと説明すれば、読者の方に伝わりやすいですね。

竹内 はい。

坂本 特に、どのあたりが聞きにくいのか、ガイドや点数がでます。オペレーターが、シニア(高齢者)の方の応対をするのに、聞きやすいように話しかけるための、トレーニングツールアプリになります。本格稼動は、これからでしょうか?

竹内 はい、本格稼動はこれからですね。すでに、お披露目はしております。社内では、全社会という会でお披露目しました。2月には、お客様(クライアント企業様)を集めて交流会を開催しました。そこで、シニア(高齢者)対応ということをテーマにディスカッションをしました。その時の懇親会で、お客様に体験して頂いたり、見せたりしました。

坂本 お客様の評判はいかがでしたか?

竹内 評判良かったです!皆さん、非常に興味を持っていただきましたよ。自分の声が高齢者にどう聴こえているか体感でき、興味深そうでした。難聴のパタカもそうですが、貴社と一緒に取組ませて頂いている高齢者応対への科学的なアプローチへの興味を実感しましたね。

*難聴のパタカ:老人性難聴など、内耳を原因とする難聴の場合、パ行、タ行、カ行の音節を聞き間違いやすいことが知られている。

坂本 本当ですか!それは良かったです。開発段階でディスカッションさせていただきましたが、模擬難聴の技術ってまじめに考え始めると実用化が難しいんです。

*模擬難聴:擬似的にシニア(高齢者)の聞こえを体験できるオトデザイナーズの技術。


  ジェロトークアプリ(画面)

木下 そうでした。

坂本 耳が悪いと言っても、その聞こえは千差万別ですから、シミュレーションとしてこれでいいのか?ということがあります。ですから、先ほどからお話していますが、耳栓をすればシニア(高齢者)の聞こえを体験できるというのは大間違いなんです。

竹内 そうですね。

坂本 実際、聴覚の構造は複雑ですし、一人一人違います。模擬難聴のシステムは、もともとは個人の聞こえを特定するためのもので、事前にその人の聞こえを厳密に測定します。測定しようとすると、一人、1~2時間くらいかかるんです。ですから、実用化に向けてかなりのハードルがありました。今回トレーニングとして使用されるとのお話でしたので、最大公約数的な老人性難聴の症状を考え、それよりも、やや悪く、少し難しい人の聞こえを想定してアプリを開発しました。トレーニング用ですから。出来上がってみて、実際にトレーニングしていただければ、ツールとして、お役に立てるなと感じました。最初は5種類ぐらいの模擬難聴の度合いを入れた方が良いのではないかと、お話をした記憶もあります。

木下 ありましたね。その部分は色々とディスカッションさせていただきました。

坂本 よくよく考えると、トレーニングツールとして使用されるわけですから、最初から5種類もあったら使う人は大変ですね。このへんは専門家として、どうしても抜けきらなかったところでした。

木下 逆に、私たちは聴覚の専門家ではないので、実用化に向けては、お互いの知恵を出し合えて良かったのかもしれませんね。

坂本 アプリ開発の前に貴社でセミナーも開催させていただきました。その時はパソコンでしたが、参加いただいた方々に模擬難聴の体験をしていただきました。この時の模擬難聴の変換は、とりあえずは1種類だけだったんです。シニア(高齢者)の聞こえの基本的な知識と、それを体験するツールがあれば、良く理解してくいただけるってわかってたんですが・・・開発のことになりますと、固定観念が強く働いてしまいました(笑)

木下 今回、竹内が、東京、大阪、名古屋と三箇所で交流会に参加してきました。センターのオペレーションに携わられる方の交流会なので、シニア応対に対する問題点や困りごとを共有する場所なんです。真っ先に出てきた質問は、「このアプリいくらですか?」という話でした。

坂本 へぇ~、そうですか。

木下 今回、このアプリについては、販売目的ではなく育成のプロセスとして、まずは組み込みたかったんですね。知識として持っているだけではなく、実際に体験してみるというのは全然違いますから。

坂本 違いますね。

木下 WEBで、シニア(高齢者)は、このように聞こえます。というサイトもありますが、このアプリは、実際に自分の声でしゃべってみたら、こんなふうに変わって、こんなに聞こえ難くなってしまうと実感して貰えます。これを広げていくと、どのような言い回しが相手に聞こえやすいのか、オペレーションする中でも、無限に広げて行くことができます。

坂本 そうですね。

木下 今まで、そういったツールがなかったんで、使い方によってはオペレーションの品質を高めたり、結果として生産性を高めたりすることが出来るのではないかと期待しています。

坂本 実際に今回のアプリを使用していただいてご理解いただけたと思いますが、WEBによくある高齢者体験サイトと今回のアプリは全然違いますね。高齢になると高い周波数の音が聞こえなくなってきますが、それだけじゃない。よくある体験サイトは、単純に高い周波数の成分をカットしただけの音声です。これは、実際のシニア(高齢者)の聞こえとは、かなり違いますね。YouTubeに弊社の技術で作った模擬難聴のファイルをアップしたら、かなりの再生回数がありました。皆さん、シニア(高齢者)の聞こえには、かなり興味あるみたいです。

木下 そうですか。あとで検索してみよう。

坂本 ツイッターなどの反応を見ますと、さらにわかります。中には、シニア(高齢者)の人が、「確かにこういう風に聞こえる!」って・・・考えてみると、理論的には2回シニアの耳を通ってることになるから、ちょっと違うかもしれないんですけど・・・

一同 (笑) 

高齢者の聞こえ方(YouTubeオトデザイナーズチャンネルへリンク)

**** シニア(高齢者)だから理解が悪い? ***** 

坂本 実際にコールセンターでシニア(高齢者)のお客様対応で困っていることって、どのようなことがありますか?

竹内 そうですね。先ほども話しをしましたが、「なかなか話を聞いていただけない」「ずっと話をされている」「話の途中で急に怒り出す」などの声や、お話ししてもお客様が聞き取りづらいようで、なかなか、こちらの内容をご理解いただけないということもあります。

坂本 まさに、シニア(高齢者)の聞こえの問題ですね。シニア(高齢者)が相手だと、大抵の人は先入観で「呆けているのではないか?」と錯覚してしまうんです。もちろん、誰もが高齢になってくれば、そのような症状が発生する確率は高くなりますし、若いときより記憶力などは落ちます。だからそのように感じるんだと思うんですね。

竹内 はい。

坂本 実話ですが、あるご家庭で、突然おじいちゃんが話を理解出来なくなったそうです。怒りっぽくもなったりして。おそらく、ご家族は、いま竹内さんが言われたオペレーターの方々と同じ状態です。ご家族はおじいちゃんに、認知症の症状が出たと思ってしまったそうです。病院で調べていくうちに、実は耳が悪いことが分って、補聴器を着けたら以前のおじいちゃんに戻ったという話です。意外と少なくないですよ、このケースは。

竹内 なるほど。

坂本 特に、シニア(高齢者)向けのサービスや商品を提供している会社であれば、シニア(高齢者)だから理解が悪いだろうという観念は捨てるべきですね。それが頭にあると、そこから先に進めない。

竹内 わかります。

坂本 接客業の方からもご相談を受けることがありますが、ちゃんと聞く環境を作っているか?ということを必ず伝え、確認します。

竹内 環境とは具体的にはどのようなことですか?

坂本 一つは空調などの音です。ゴォォォみたいなのは、シニア(高齢者)になると聞き取りに物凄く悪影響があります。接客されている側は、自分が感じてないので何とも思いませんが、シニア(高齢者)にとってみれば物凄いノイズなんですね。

竹内 それ以外にはありますか?

坂本 あとは音の反射ですね。音がワンワンと反射するところでは聞き取り難いです。もう一つ例にあげれば、マスクをされている方とお話するのも口元が見えないので聞き取り難いです。

竹内 マスクも・・・ですか。

坂本 人間は知らず知らずのうちに、聞き取り難くなると相手の唇の動きをみるようになります。相手の唇の動きが見えないのは、相手が何を言っているのか分り難くなります。

竹内 なるほど。

坂本 環境も含めてということになりますが、こちらがイライラ感を募らせてしまう前に本当に相手が内容を理解出来ないのか? それとも、言葉の内容が聞き取れないから伝わらないのか?を考えることで、対応は大きく変わると思います。

竹内 はい、その通りです。

坂本 ただ、その判断は見た目では、こちら側にはわかりませんし。

竹内 そうですね。

坂本 実は、シニア(高齢者)ご本人も、自分は聞こえているつもりで話をしているのです。実際には聞こえていないというケースが多いんですが。ご自身の聞こえが悪くなっていることに気が付いていないんですね。だから、話をしたら理解してくれているようなので、聞こえていると思って話を進めていって、ご満足頂いた。良かった、良かったと思っていたら、後で急に話が違うなんてクレームの電話をかけてくるケースも多いと聞きます。

竹内 電話オペレーションでも、それはよくあります。これはご理解いただけましたか?それでは次の工程はこれになります。最後に、出来ましたか?ご理解いただけましたか?となるわけです。その間では、お客様は、「わかった」「はい」などと進んで行きますが、結果、ご理解をいただいていないというケースは非常に多いようなんです。

坂本 だからと言って、お客様に、「もう一度私が言ったこと、言っていただけますか?」とは言いづらいですしね。

木下・竹内 言うケースもあります。

坂本 え?お客様に怒られませんか?

木下 怒られない程度に、軽く確認をとりながら進むみたいです。

坂本 すごいテクニックですね。

木下 細かいテクニックを持っているオペレーターはたくさんいますよ。

竹内 相手に言ってもらえれば、それは理解しているということになりますから。

坂本 ただ、一歩間違えると「人を馬鹿にしてるのか!」って怒らせてしまう可能性がありませんか?

木下 もちろん最初からではなく、必ずステップは踏むようです。まずはきちんとした応対から入ります。次に、例えば語尾に、“ね”を付けて話しても大丈夫なお客様か、応対の様子を見ながら距離を縮めて行くそうです。少しずつ砕けてお話しして、大丈夫かな?とお客様との距離感を掴むようにして、大丈夫なお客様のようであれば、大事な部分は、お客様にこちらの話した内容を復唱して貰うというようなことができるオペレーターはいます。

坂本 まさに、究極の「伝わる技術」ですね、それは。

竹内 そうですね。

木下 ただ、このオペレーションは、少なくとも3年くらいは経験した人でないと出来ないですね。高等テクニックだと思います。

坂本 補聴器の販売店などでは、お客様が、ご自身が聞こえないことが前提になって来店されるので、本人に内容を復唱させることは比較的容易にできますが、御社のように、聞こえないという認識のない人にその手法を使うと、下手をすると怒らせてしまうことがありますし、あと、自分は聞こえてないのかと落ち込ませてしまうケースもありますから。一般的には、復唱は無理かな?と思っていたのですが、実際にやられていることを聞いて驚きました。