オトコラム

第13号 声のメカニズム(2)
     ~ 空気の冒険 ~

前号では、人間は「声」を作り出すための超精巧な管楽器をいつも持ち歩いているというお話をしました。
人間が声を出す時、まずは肺から空気を出しますね?
肺から出た空気は声帯を通り、その後に口の中や鼻の穴などから出来ている「声道」と呼ばれる空気の道を通り、唇から外に出て「声」となるのです。

ここで、声の大きさは、ほとんどは肺からの空気の量で決まります。
たくさん空気が出てくれば大きな声、少なければ小さな声ですね。
普通の大きさの声であれば長時間でも喋り続けられるのに、大きな声で怒鳴ったり、歌ったりすると短時間で息が切れてしまいますよね?
これは単純に、肺からたくさんの息を出しているからです。

さて、ここからは!

“この肺から出てきた空気が、どのような経路を通り、どのような過程を経て「声」として唇から出て行くのか?”

という、いわば「空気の大冒険」とも言える物語をお届けしましょう!
(う~ん、“大冒険”は、ちょっと大げさかもしれません。でも結構、複雑でハプニングの多い旅である事は確かですよ!)

“声になって相手に届け!”との重大な使命を背負って肺から飛び出した“空気君”、まずは声帯(せいたい)に到着します。
声帯・・・聞いたことありますよね?
良く「声帯にポリープができて、声が出なくなった」なんて話を聞く、あの声帯です。
そう、声帯とは、舌の根っこの所よりもやや下側にある喉頭(こうとう)という器官の上部にあって、発声するためには、とてもとても大切な器官なんです。

この声帯、2枚の襞(ひだ)で出来ていて、それが横に並んだような形をしています。
そうですね、例えばカーテンのようと言うか、襖のようと言うか、門や扉のようと言うか・・・
つまり2枚の襞が真中で左右に分かれているわけです。
この2枚の襞は、頻繁に開いたり、閉じたりします。
開いた時にできる2枚の襞の間、つまり通り道は「声門(せいもん)」と呼ばれます。

空気君は、声帯が開いている時だけ、声門を通って先に進むことができます。
閉じている時は、残念!、行き止まりです。
声帯が開いたり、閉じたりするスピードは、男性で1秒間に120回くらい、女性で250回くらいです。
だから、空気君は1秒間に120回くらい、出たり、止まったりを繰り返されるわけです。

肺から出された空気君、最初はノンビリと一定の量で「ふぅぅぅぅぅぅ」と出てきたのに、声帯で細かく分けられて、1秒間に120回~250回くらいの周期で出されたり止められたり・・・細切れにされてしまいます。

肺からの旅が始まってすぐに、いきなりバラバラの細切れに!
こりゃぁ、大変な冒険になりそうです。
ちょっと可哀そう?

いえいえ、ちっとも可哀そうじゃありません。
これがなければ「声」はできないんですから。

(2008.01.29)


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