オトコラム

第17号 声のメカニズム(6)
     ~ 心に届け ~

前号まで、肺から出発した「空気君」が「音源君」に進化し、その後、舌と軟口蓋が複雑に、しかも超高速で動きまわるトンネルを抜けて行くお話をしてきました。
いよいよ、長く複雑な冒険の旅も、終りに近づいてきました。

舌と軟口蓋が形作る複雑なトンネルで、押されたり、潰されたり・・・
苦労に苦労を重ねて、何とかこのトンネルを突破した後に待っているのは・・・
“歯”と“唇”です。
この長い旅の最後の関門と言っても良い、新たな敵の登場です。

歯は、トンネルの出口の門番で、いつも開いたり閉じたり、思わせぶりです。
時には、通り抜けられるかどうかギリギリくらいの狭い隙間を作って待っていたりします。
行くか、止まるか?
迷ってしまうような狭い隙間を作って、こちらがどうするのか、ほくそ笑みながら見ているのです。
いじわるですね。

さらに、さっき突破してきたはずの舌が後ろから追いかけて来て、歯の裏側にぶつかってきたりします。
タイミングを間違えると命取りになりかねない危険なエリアです。

タイミングが良ければ、広い隙間を堂々と抜けられますが、時には、歯が作る狭い狭い隙間をすり抜けるように通らねばなりません。
そしてそのすぐ上では、舌が歯に当たったり、離れたり・・・ちょっと怖いです。

でも、怖がらないで。
度胸を決めて、エイヤッ!と突っ込んでみましょう。

その先では、軟かい唇が、外界への扉を優しく開いています。

そして、思い切って外界へ飛び出してみると・・・

最初は、肺から出てきた単なる「空気」だったのに・・・
気が付けば、美しい声になり、そして自分の気持ちを相手に伝える事が出来る「言葉」に進化しているではないですか!
大変な冒険を終えて、外界に飛び出してみたら“声”に、そして“言葉”に進化していたのです。

その声は、その言葉は、大気中を伝わって、相手の耳の穴から鼓膜に到達し、耳小骨から内耳を伝わって脳に届き、、、
そして、相手の“心”に届くのです。

(2008.12.26)


△ページTOP