オトコラム

第35号 駅の売店の店員さん

いきなりですが、混雑した朝の駅の売店を思い出してください。
喧噪の中で大勢のお客さんが次々に売店の前に現れ、口々に注文を言い、人によっては勝手に新聞や雑誌を棚から引き抜いて、お金を置いて去って行きます。

中には、お釣りが必要な人もいるわけですが、売店の店員さん達は、ほとんど間違えずに商品とお釣りを渡しています。
よくもまぁ、あれだけ様々な音が混在する中で、あんなスピードで正確に対応できるものだと思いませんか?

大量のデータや情報が行き交う現代社会における私たちの生活、さらに、ビジネスのシーンにおいては、そのデータや情報の量がさらに多く、これらが入れ替わる頻度とスピードは、以前とは比べ物になりません。

そんな中で日々の生活を送り、そして仕事に励む私達にとって、駅の売店の店員さん達は、ぜひとも見習いたい耳の達人であると言えるでしょう。

しかし、彼ら、彼女らは、聴覚の末梢器官、外耳、中耳、内耳の機能が特に優れているわけではないのです。
おそらくは、これらの末梢器官の能力は、通常の人たちと同じか、店員さんがご高齢であれば、若者よりはむしろ落ちているであろうと思います。

音を聞くのは聴覚の役目。
そして、駅の売店の店員さんに入ってくる情報は、お客さんの注文の声であれ、周囲の騒音であれ、ほとんどが音であるわけです。

しかし、聴覚の末梢器官の能力は皆と同じか、それ以下???? 

おそらくは、「そんなにみんなパチンコ屋に行くの?~ カクテルパーティー効果 ~」でお話したカクテルパーティー効果が強く発揮されているのでしょう。

両耳をしっかりと使って、お客さんの声に自分の聴覚をチューニングしているのでしょう。
また、様々な音が混在する中から、自分が聞きたいと思う、もしくは聞かねばならない音の流れ、音の塊を見つけ出す能力に長けているのでしょう。

長年、ああいった環境で仕事をするうちに、「音を聞くための脳内部位」のトレーニングが為されたのではないかと思います。

大変に優れた特殊技能だと思います。

まさしく、耳のプロフェッショナルですね!

(2011.09.05)


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