オトコラム

第40号 骨で聞く(5)

今回が骨導のお話の最終回になります。

前回は、自分の声や、物を食べる時の音が、骨導に大きく影響を受けているというお話でした。

しかし、自分の声や食べる時など、頭蓋骨を直接的に揺らす時しか骨導は使われていないのでしょうか?

いえいえ、私たちは、普通に音を聞いている時にも、気導と骨導の両方を使っているのです。

指で耳を塞いでみましょう。 どんなに強く塞いでも、かすかに音は聞こえるはずです。 完全に無音には出来ないはずですよ。 目は、つぶってしまえば真っ暗ですが、耳は、どんなに塞いでも完全な無音には出来ないんです。

これは、骨導があるからです。 音は空気の揺れですから、この揺れは鼓膜だけでなく、頭蓋骨にも当たります。 すると、このかすかな振動が、骨導を通して内耳に伝わるんです。

例えば、ヘッドフォンをして、右耳の側だけから音を出したとします。 当然、大部分の音は右耳で聞こえるわけですが、骨導を通して、わずかですが左耳でも聞こえているんです。 右側のヘッドフォンの音が頭蓋骨に当たり、その振動が左側の内耳にも伝わるからです。

“音は耳で聞くもの”と思い込んでいませんでしたか? 食べ物の“食感”や“味”と“音”なんて、全く無関係だと思っていませんでしたか?

音は、生活の様々な部分に、深く、強く、影響を及ぼしているのです。 空気のある所には、必ず音があるんですから。

(2012.3.13)


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