オトコラム

第71号 視覚が“かわいそう”な時代

近年は、“視覚”がとてもかわいそうな時代だと思います。

人間には五感があると言われていますが、その中の1つの感覚でしかない視覚に、膨大な

量の情報が押し込められているからです。

ネットとスマートフォンの普及が、その大きな要因でしょうね。

スマートフォンの、あの小さな画面の中に、どれだけの情報が詰まっているか。

連絡の手段は、LINEやメールなど、ほとんどが視覚からです。

仕事や勉強のための資料やデータなども、ほとんどがPCやスマートフォンの画面に表示

されていて、それを見たり、読んだりしています。

ネットの普及によって、私が学生だった時代に比べて、数百倍、数千倍、数万倍・・・

の情報が手に入るようになりましたが、その大部分は視覚から入ってくるわけです。

製品開発の世界では、その製品の機能よりも、見た目のデザインなどが重視されるように

なりました。

「見た目は武骨だけど、あれって良い製品だよね」といった評価は、全くと言ってよい

ほど聞かれなくなりました。

新商品ができると、メーカーはネットなどを駆使して、きらびやかな画像や動画などを

配信しますし、ユーザーも次々に現れるそういった情報をPCやスマートフォンで追跡

します。

電車などで周りを見ると、ほとんどの人が、スマートフォンの小さな画面を必死に眺めて

いますね。

ちょっと五感のバランスが偏っているように思います。

視覚にばかり仕事させ過ぎです。

視覚は、感覚のブラック企業です。

こき使われて、かわいそうです。

そう、ストレスがたまるわけですね。

あ、だけど、私は聴覚の専門家だから「視覚を使わないで耳を使え!」とか言うつもりは

ないんです。

多くの情報が手に入るということは、とても良いことなので。

ただし、新製品や新サービスのアイデアを考える時に、“視覚的な発想”しか頭に浮かんで

こないようなら、それはもう、あなたの感覚は時代遅れなのだと思います。

なぜなら、今現在で、もう既に、多くのユーザーの視覚はキャパが一杯に近い状態だから

です。

時代は、もう、次のステージへ動き始めていますよ!

それは、視覚以外の4感を上手に活用する時代です。

(2018.4.11)


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