オトコラム

第74号 「聞こえない言葉」を発信する”罪“

85歳の私の母が、短い期間に2つの大きな病院に行きました。

A病院は、ドクターも看護師の皆さんも、いつも笑顔で、とても感じが良い。

でも・・・みんなマスクをしていて、そして、とても早口で、何を言っているのか、

私でさえも、とても分かりにくい感じでした。

聞き返すと、とんでもない大声で叫ぶ・・・当メルマガの読者の皆さんなら、それが

イケないことは、良くご存知ですよね?

もちろん、母には話の半分も伝わっていない様子でした。

一方、もう1つのB病院は、もちろんインフルエンザが怖い時期ですから、皆さんマス

クはしていますが、やや大き目くらいの声で、ゆっくり、ハッキリ話してくれます。

伝わっていない様子があると、耳元に口を寄せて、さらにゆっくり、ハッキリと話します。

ドクターも看護師さんも、皆さんがそうです。

言うまでも無く、母にもシッカリと話が伝わっています。

医療機関という場所は、インフォームドコンセントが最も重視される場所のはず。

患者・家族が病状や治療について十分に理解することが最重要なはずなのに、この差は

何なんでしょうね?

先日、ある映画を観ていた時のこと。

実力派の俳優陣が出演していて、ちょっと興味があったので観てみたのですが・・・

私でさえ、台詞の声が小さくて聞こえない・・・(泣)

そのくせ、ちょっと場面が変わると、物凄い大音量で自動車の音や雑踏の音などが響き

わたってくる~!

リアリティを追求したのかもしれないけど、俳優さんたちの演技や脚本の良し悪し

以前の問題で、観る気が失せました。

私よりも年配の方々なら、もっと辛い思いをするんじゃないかな。

そう言えば、今年のNHKの大河ドラマも「ストーリーのテンポの速さや情報量の多さに、

高齢者がついていけない」との批判があるそう。

ただ、あれ、私も観ましたが・・・

あれはね、情報量が多いせいじゃないですよ。

台詞に周囲の雑踏の音や効果音をかぶせ過ぎなんです。

あれじゃ、高齢者には“言葉が聞き分けられない”んです。

ビートたけしさんがナレーターを務めているのも一因かもしれません。

面白いけど、早口で、あまりカツゼツ良くないですから。

「情報量が多いと高齢者がついていけない」とかって感覚が、もう、知識不足と言うか、

考えが浅いと言うか。

大部分の高齢者は、情報量が多くても、ちゃんと伝われば、ついてこられます。

情報量が多いとすぐに飽きてしまって、理解することを放棄してしまうのは、むしろ

若年者でしょう。

高齢者に関する知識不足の上に、「みんなボケてきてる」みたいな小バカにしたような

感覚だから、日本のテレビ業界は衰退しているんじゃないでしょうか・・・?

テレビのCMなどでも、シニア向けの商品なのに、BGMの音量がデカかったり、やたらと

早口だったりっていうのが、よくありますね。

あららら・・・「高い広告宣伝費をかけて、これではねぇ」と思うことが多いです。

病院も、テレビの映画もドラマもCMも、みんな高齢者にとって、とても大切なもの

ばかりです。

そこで伝わらない、理解できないとなると、とても不安で心配になるのです。

自分の健康に関わるような話が把握できなかったり、楽しみにしているコンテンツの

内容が分からないって、本当に辛いんですよ。

高齢者に伝わらないような話し方をしたり、高齢者の聞こえに対する配慮の無い作品を

作って発信するのは、

これは、とても罪深いことなのです。

(2019.1.21)


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