オトコラム

第19号 そんなにみんなパチンコ屋に行くの?
     ~ カクテルパーティー効果 ~

以前にオトデザイナーズで、音に関するインターネット意識調査を行ったことがあります。
好きな音、嫌いな音、会話をしにくいと感じる場所、音に関する思い出などを、1万人の回答者に尋ねたのです。
その中で、「会話をしにくいと感じる場所」の第1位は、どんな場所だったと思いますか?
な、なんと、答えは~  

「パチンコ屋」

でした。
日本人って、そんなにみんなパチンコ屋に行くんですかねぇ?

ところで、パチンコ屋をはじめとして、周囲に騒音が多い場所でも人間は会話をすることが出来ますよね?
昼時のレストランや居酒屋さんなど、かなり騒々しい場所でも、多少の苦労はしますが、我々はちゃんと相手の言っていることを理解できます。

ああいった場所で、専用の測定器とコンピュータを用いて音の分析をして、その中から必要な“声(音声)”を見つけ出したり、その会話内容を認識するのは、実は至難の業なんです。
周囲の騒音に埋もれてしまった声を的確に見つけ出して、その内容を完璧に理解するって、現代の技術をもってしても、かなり難しいんですよ。

では、なぜ人間にはできるのでしょう?

まず、人間には耳が二つあります。
二つの耳に入ってきた音のタイミングや大きさの違いから、音がどの方向から来ているのかを脳の中で判断しています。
だから、話し相手がいる方向から来る音に対する感度だけを上げることができるのです。

次に、人間の声にはピッチと呼ばれる音の成分(基本周波数とも呼ばれます)があります。
ピッチについては、オト・コラム第14号でもお話していますので、忘れちゃった方は、もう一度読んでみて下さいね。

聴覚は、滅茶苦茶に混在する様々な音の中から、ある一つの基本周波数の動きを見つけ出す能力を持っています。
これは、そうですね、例えばオーケストラの演奏の中から、ある一つの楽器の音色だけを見つけ出して聞くことが出来ますよね?これに似た能力です。
つまり、様々ある音の中から、聞きたい声の基本周波数を見つけ出し、その周波数が変化していく様を、“一つの流れ”と言いますか、“一つの音の塊(かたまり)”と言いますか、そんな風に捉えて、それを追跡し、内容を理解して行くことが出来るのです。

もちろん、そこにその人の話し方の癖や、その時の話題などの情報が入ってきて・・・
そういった様々な情報を受け取った「脳」が総合的に判断して、話の内容を理解するのです。
会話の時のスピードを考えてみましょう。
こんなに多くの情報を次々と処理して、言葉の内容を理解し、会話を楽しむことが出来る人間の聴覚って・・・
これは、なかなか機械には真似のできない、人間の聴覚と脳の凄さですね。

・・・で、これは「カクテルパーティー効果」と呼ばれる、聴覚の優れた能力の一つなんです。
「カクテルパーティーのように大勢の人が喋っている騒々しい中でも、人間は話し相手の言葉を理解できる」
ということから名付けられたそうです。
オトデザイナーズ的に言えば、「パチンコ屋効果」ですか・・・。

(2009.7.27)


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